トコジラミという害虫をご存じでしょうか。昼間はものの隙間に姿を隠し、夜になるとはい出てきて人間の血を吸って、ひどいかゆみを発生させます。
そんなトコジラミの駆除を自分でおこなうには、どのような方法があるのでしょうか?
本記事では、トコジラミの生態と、侵入経路、自力でできる効果的な駆除方法、新型のトコジラミについてご紹介いたします。
自分でトコジラミを駆除しようと考えている方は、ぜひご一読ください。
恐怖!トコジラミの生態とは
トコジラミとは、南京虫とも呼ばれる害虫です。
吸血性のあるカメムシ目の昆虫で、人間に直接の害を与えます。
トコジラミという名前のとおり、布団やベッドなどの寝具をはじめさまざまな場所に生息します。部屋の柱、床板、壁や壁紙の裏側、タンスなどの家具の隙間や継ぎ目、衣類、カーテンの裏やカーテンレールの隙間など、家具や建物にある隙間に住み着き、夜になると血を求めて徘徊します。
吸血するのは成虫だけではない
トコジラミに血を吸われると、激しいかゆみに襲われます。血を吸う際、トコジラミは人間の体内に唾液を入れます。この唾液がアレルギー反応を引き起こし、激しいかゆみが発生するのです。足・腕・首・お腹など、皮膚の露出しやすい場所を中心に被害が発生します。
トコジラミの怖いところは、幼虫か成虫か、あるいはオスかメスかを問わず、すべてのトコジラミが吸血をおこなうということです。繁殖してしまうとそれだけで被害が拡大するので、かゆみの被害も深刻になります。 卵は家具の隙間などのざらついた箇所に産み付けられ、数を増やしていきます。
経済的な被害を発生させる虫でもある
トコジラミが発生した旅館やホテルなどの宿泊施設や商業施設は、徹底的な駆除が完了するまで営業停止を強いられることも多々あります。また、一度発生したトコジラミを完全に駆除することができても、「トコジラミが発生した場所」という悪いイメージを払拭することは難しく、風評被害に悩まされることにもなります。
衛生環境は関係ない!?侵入経路とは
一般的に、害虫というと、湿気やカビ・ホコリなどを好んで不衛生なところに住み着くものが多いです。
そのような場合は、部屋の衛生環境を改善させることが被害の軽減につながりますが、トコジラミの場合はそんな対策も効果は比較的薄いのです。
トコジラミは、「不衛生な場所に住み着く虫」というわけではありません。だからこそ、衛生環境の改善だけでは太刀打ちできないのです。言い換えれば、衛生的にしているから安全というわけでもないのです。
侵入経路
トコジラミはノミのようにぴょんぴょんと跳ねて移動します。羽を持っていないので、室内に飛来することはありません。トコジラミが入ってくる原因は、「外から運び込こまれる」という場合です。
・海外からの輸入品や旅行客にくっついて国内に侵入・国内に侵入したトコジラミが公共施設などで拡散される
・自宅にいるトコジラミを住人が知らずに別の場所へ持ち込む
・トコジラミが付着している家具を再利用してしまう
・何らかのきっかけで、屋外でトコジラミが服やカバンに付着し、家に持ち帰る
などのケースです。
トコジラミがみずから家の中に入ってくるというよりは、「結果的に運び込んでしまう」というパターンが多いのがわかります。
海外旅行によく行く人や、中古の家具を頻繁に購入する人は要注意です。
ほかにも、大衆浴場や公共交通機関、タクシーなどでトコジラミが媒介されることもあります。
また、時と場合によっては、トコジラミが発生した隣室から、ネズミなどの移動を介して運ばれることもあるといいます。
旅行先でも要注意
日本での被害が増えているトコジラミですが、被害の大元は海外から日本に持ち帰ってきたせいだといわれています。
現に、海外旅行先からトコジラミを持ち帰ってくる事例が多発しているといいます。
海外の安宿は注意
海外旅行に行く際にとくに注意しなければいけないのが、安宿に宿泊するときです。
安宿の部屋のベッドなどには、トコジラミがわいていることも多々あります。どのような宿泊先にもトコジラミがいる可能性はありますが、可能性が高いのが安宿なのです。
海外旅行からナンキンムシを持ち帰らないための対策
旅行先からナンキンムシを連れて帰らないために、以下のことを心がけてみましょう。
・旅行カバンやスーツケースの中に防虫剤を入れて旅行に行く・表面がつるつるしたベッドフレームの部屋を選ぶ
・バッグや布団などが、地面とベッドに同時に触れている状況を作らないようにする
・スーツケースやバッグを直接床やベッド、ソファに置かず、ビニール袋に入れておく
・帰国したら、海外で来ていた服を80度以上の湯に5分以上つけ置きする
これらの方法で、「海外からトコジラミを持ち帰らない」「持ち帰ったトコジラミを家で繁殖させない」ということを心がけましょう。
自分でできる効果的な駆除方法は?
現在、トコジラミを駆除するための商品が販売されています。
殺虫剤
トコジラミに効く殺虫剤には、残留噴射型タイプと直接噴射タイプ、粉末タイプなどがあります。
・残留噴射タイプ殺虫効果が長く残るタイプのスプレーをおこなう方法です。
・直接噴射タイプトコジラミを発見したらその場で直接スプレーをし、殺虫します。
・粉末タイプ畳やカーペットの裏に散布することで効果を発揮します。粉は虫の身体に付着しやすいので、駆除効果が高くなります。
加熱
トコジラミは一定の温度以上の状態では死んでしまいます。スチームや洗濯機、熱風乾燥器を使って、ベッドの隙間やソファ・ベッドを加熱します。
また、熱に強い素材のものや場所であれば、80度以上の熱湯を使用して加熱殺虫する方法もあります。
掃除機で吸う
実は、掃除機による吸引が、物理的なトコジラミ対策としてはもっとも効果的だといわれています。
薬剤の使用や加熱では、詰めが甘くなってしまうと根本的な解決にはつながらないことが多いからです。
トコジラミを発見したらすぐに掃除機で吸って、直接的に駆除をするのがいいでしょう。
スーパートコジラミにも注意しましょう
多くの害虫駆除で使われる薬剤に、「ピレスロイド系殺虫剤」があります。
蚊やハエをはじめ昆虫全般に効くといわれる神経毒で、かつ人間と鳥類には悪影響がないとされているので、殺虫剤の多くに配合されているメジャーな殺虫成分です。
しかし、このピレスロイド系殺虫剤に対して、トコジラミが抵抗を持っていることが明らかになってきました。それに代わって、2010年ごろから、トコジラミには有機リン系殺虫剤を使用するとよいということが知られるようになりました。
このように、薬剤が効きにくいトコジラミは、一般的に「スーパートコジラミ」と呼ばれています。
現在では、有機リン系殺虫剤にさえも抵抗性があるトコジラミの存在も報告されているため、薬剤による駆除がどんどんやりづらくなっているという事実もあります。
トコジラミはただでさえ完全駆除が難しい害虫です。このような一癖も二癖もあるスーパートコジラミは、一般の方が駆除をするのには限界があります。